<概要>
私達の研究室では、高分子合成技術およびナノスケールの構造・空間を制御する自己組織化技術をベースに、革新的な高機能ソフトマテリアルの創製を目指して研究に取り組んでいます。生体高分子のもつ豊富な機能と精緻で絶妙な構造を手本に、生体親和性や環境調和型のスマートポリマーの新規設計や精密合成法の開拓、その機能・特性評価を総合的に行っています。
自己組織性ペプチド・ナノマテリアルの開発
人工ペプチドを用いたナノ構造材料は、環境に優しいナノバイオ材料として様々な応用が期待されます。本研究は高次構造や分子間相互作用を精密に制御した人工ペプチドを設計し、それらの自己組織化を利用した三次元ナノ構造体の自在構築技術の開発、薬物運搬キャリアや細胞足場材料などへの応用を目指しています。
アミノ酸を基盤としたスマートポリマーの開発研究
アミノ酸はタンパク質を構成する生体分子であり、側鎖構造に基づいて様々な性質を有しています(標準アミノ酸として20種類存在) 。我々は、アミノ酸のもつ多彩な機能と生体親和性に着目し、種々の精密高分子合成技術を用いて、これらを基盤とする新しいバイオ由来高分子の開発を進めています。多様なアミノ酸構造を反映した刺激(温度/pH 等)応答性スマート材料などへの応用を目指しています。
ペプチド-ポリマー・ハイブリッド戦略による機能性高分子材料の開発
高次構造・生体機能設計が容易な人工ペプチドと材料特性に優れる合成高分子のハイブリッド戦略による新しい機能性高分子の開発を進めています。ペプチド種と合成ポリマー種の設計・選択に加えて、両者の組み合わせ方:高分子形状(ジブロック/マルチブロック型、グラフト型等)も機能発現の鍵となります。配列制御ペプチドの高い自己組織性や生理機能を生かした自己修復性フィルム・ハイドロゲル材料、二次元/三次元の細胞足場材料、超撥水性薄膜材料など、ナノ・バイオマテリアルへの応用を進めています。
生体親和性と生分解性を併せ持つ地球と調和する新規高分子の開発
プラスチック材料は我々の生活に必要不可欠な材料ですが、自然環境ではほとんど分解されません。特に、近年では自然環境に放出されたプラスチックの劣化により生じるマイクロプラスチック (MPs) が大きな問題となっています。「生分解性」はこの問題を解決するために最低限求められる特性です。一方、どれだけ生分解性に優れようともMPs 状態を経由することは避けられません。我々はMPsが生体内取り込まれることを念頭に、「生体親和性」を付与した生分解性プラスチック材料の開発を目指しています。また、資源循環を可能とする分子設計やバイオマス原料を利用した合成経路の探索にも取り組んでいます。
人工知能 (AI) を活用した高分子材料の機能予測モデルの開発
人工知能 (AI) は近年急速に発展しており、今後は材料開発においても必要不可欠な存在になっていくことが予想されます。我々は、高分子材料、特に高分子バイオマテリアルの物性予測モデルの開発に取り組んでいます。研究者の勘に基づく材料開発では多くの時間とコストが必要であり、医療機器の価格上昇につながります。また、持続可能な開発目標 (SDGs) の観点からも、多くの資材を必要とする材料開発は避けるべきです。このような課題を解決すべく、我々は実験学による良質なデータベースの構築ならびに高分子の化学構造から物性や機能を予測する機械学習モデルの開発を進めています。AIを活用することで地球環境と調和する次世代材料の開発基盤の構築を目指しています。